レポート Report

坂 雅子さんがつくる“身に纏うアクリル”

8月19日(土)の自律的キャリア教育において、acrylic(アクリリック)代表取締役の坂 雅子さんに実際の商品とともに講演いただきました。常に笑顔で楽しそうな坂さん。その語り口に、ユニークな発想の源とビジネスでの人との関わり方の一端がうかがえました。

素材の魅力、その魅せ方

「目的を持って開発された産業資材の存在そのものに力強さを感じる」。坂さんは楽しそうに語りはじめました。

acrylicは産業資材と特殊素材にフォーカスし、バッグやアクセサリーとして、その魅力を引き出すブランドです。坂さんは建築設計事務所で働いていたとき、周囲に溢れている建材に出会いました。自然素材にはない、つるんとした未来的な素材です。

大ぶりのイヤリングが欲しくて、東急ハンズで買った素材で自作したことがアクセサリーをつくり始めたきっかけでした。素材コーナーにあるものをそのまま身につけるような、シンプルでユニークなデザインが坂さんの「変わらないツボ」です。

37歳で単身ロンドンへ渡り、多くのインスピレーションを受けました。女性が力強く生き、さまざまな人種がいきいきと過ごしている様子に「細胞が入れ替わるようだった」と語ります。あるとき、友人からアクリルの花瓶をプレゼントされ、こんな素材でアクセサリーをつくりたいと考えました。また、それを趣味で終わらせたくないと思い、帰国後、建築模型の職人にアクセサリーの作成を依頼。アクセサリーの委託販売を始めましたが、商品は褒められることが多いものの、売り上げは伸びませんでした。

「褒められて終わるのではなく、身につけてもらいたい」。挫折を感じながらも、第一歩を踏み出しました。

永く、深い信頼関係

アクリルのアクセサリーだけでは限界があると考え、バッグをつくり始めました。妹と網戸に使う網でつくったバッグが最初です。ものを入れるという明確な用途があるバッグは売り上げが伸び、多くの人が持つようになりました。

バッグの強度と見た目の良さを両立させるデザインを目指しています。強度実験では荒く使うユーザーを想定してわざと蹴ってみるなど、さまざまなシチュエーションで確認しています。それでも素材がほつれるなど問題があった場合は、仕入れたものを全て処分します。お客様の衣服に影響が出てしまった場合は必ず弁償し、どれだけコストが掛かっても徹底した対応でお客様との信頼関係を大切にしています。

また、クライアントや業者とのつながりを重視しており、ネットワークを広げすぎず、決まった人たちと永く付き合っているそうです。「信頼できる人を信頼する」をモットーにしています。

バイヤーとデザイナーの視点

個展でのディスプレイはアルミの棚を使い、遠くから見るとコースターが置いてあるかのようにアクセサリーを平置きにします。飾り立てず、標本のような雰囲気で素材が主役になるようしているのです。また、海外の展示会で見つけたアクセサリーなどをコラボというかたちではなく、セレクションとして個展で出品。他のバイヤーが注目しない素敵な商品を見つけることができるのは、バイヤーとデザイナーの両方の視点を持つ坂さんならではの強みです。そんな魅力的な商品を、お客様がいきいきとした表情で購入されます。

「面白いもの、みんなが楽しめるものを見つけ続けられるおばあさんになることが私の夢です」

素材をそのまま身につけるような、シンプルでユニークなデザインが坂さんの「変わらないツボ」。

「Silver Net」

「FORME 2way DOT Emboss 2 Silver」

坂 雅子

acrylic代表取締役、バッグ・アクセサリーデザイナー、バイヤー。東京生まれ。大学卒業後、大手ゼネコン、建築設計事務所、デザイン事務所などを経て、グラフィックデザイナーとして独立。2001年ロンドン滞在中に独学でアクセサリーデザインを始め、2003年にバッグとアクセサリーのブランド「acrylic」を設立。2005年ニューヨーク近代美術館ミュージアムショップに最初のコレクションが選ばれるなど、国内外のセレクトショップで販売するほか、個展も開催している。著書に『遅咲きでもいい。「好き」を仕事にする勇気』(主婦の友社)。

acrylic webサイト

本レポートは、自律的キャリア教育として、社会で活躍する女性にご講演いただき、学生が聴講、インタビューしてレポートを作成しています。

指導教員:石橋勝利 株式会社アクシス デザインデベロップメント ディレクター