新規事業の創出で、誰もが活躍できる社会を
岡崎 史さんが考える理想の働き方とは?
8月3日(土)の自律的キャリア教育において株式会社エナジャイズの代表取締役である岡崎 史さんに講演いただきました。岡崎さんの快活な笑顔と挨拶から始まった講演のテーマは「営業力で人生と事業をデザインする」。17の事業立ち上げ、20の事業の伴走支援、3度の起業、4社の役員就任を経験し、1児の母でもある岡崎さんの、社会で輝いていくための秘訣を伺いました。
挑戦しつづけるためのプラットフォーム
岡崎さんの大学卒業後の初めての職場は大手飲料メーカーグループ内の情報システム企業。そこでは主にシステムエンジニアとしてデータ管理を担当していましたが、当時はその仕事に価値を見出せず、「過去のデータではなく、未来をつくりたい」と思うようになりました。そこで思い切って転職を決意。当時は、結婚以外の理由で退職する女性は珍しかったものの、岡崎さんの人生の中で最良の選択だったと語ります。
転職後に出会ったのが新規事業立ち上げで、事業を起こすことのクリエイティブさを目の当たりにすることになりました。それからは「新規事業中毒」と自ら言うほど、新規事業立ち上げの虜となり、その熱は20年経った今も続いています。
そもそも新規事業は多産多死。うまくいかないことが多いものの、挑戦しつづけること、諦めないことが重要です。そこで、新規事業を繰り返し立ち上げられるプラットフォームをつくろうと決意。それが株式会社エナジャイズです。
「一つでも多くの新規事業を創出し、誰もが活躍できる社会をつくる」。この言葉をミッションに掲げ、新規事業において失敗しやすいとされているマーケティングと営業の側面から支援を行っています。
営業力とは何か?
「クリエイターズネット」は岡崎さんが関わった事業の中で、特に「営業力」について考えさせられた事業でした。この事業は、企業とクリエイターをマッチングするというもの。しかし、クリエイターを紹介した企業から不満の声が多く上がってしまいました。その問題点として浮上したのが、能力をデータベース化したスキルセットのみで判断し、マッチングさせてしまったこと。クリエイターも人間であり、それぞれの希望や目指す理想像など数値化できない内情があるため、企業との間にギャップが生まれてしまったのです。つまり、システム化するだけではうまくいかないのです。
しかし、紹介したクリエイターの中には、企業と良好な関係を築き、成果を挙げ、仕事を継続している人もいました。リピートされるほど欲される人材と、そうでない人材の違いとは何か。調査で見えてきたのは、クリエイターとしてのスキルはもちろんのこと、自分の価値や能力を売り込む提案力・行動力と、臆さずにコミュニケーションしていく能力、そして約束を守るコミット力や信頼がリピートされるクリエイターにはあるということでした。岡崎さんはこれらを総合して「営業力」だと考えます。
一般的に営業とは、利益を出すために継続的に事業を営むこと、またその営みとされています。しかし、その本質は、対話を通して顧客の本当に求めていることを引き出し、顧客が「お金を払ってでも欲しい」と思えるほどの価値(バリュー)を伝えること。他者と差がつくクリエイターにはこの力があるということです。
圧倒的なバリュー
自分が好きなことをして食べていけるようにするには、他者にはない自分だけの「圧倒的なバリュー」が大切だと岡崎さんは言います。圧倒的なバリューとは、「自分にとっては息を吸うように自然にできることだけれど、他者にとっては難しく、感謝されること」。つまり、自分の好きなことであり、得意なことであり、求められること、それらが収益に繋がっていくことが、岡崎さんの理想の働き方です。
今は誰もが情報を発信し、欲しい情報に直接アクセスできる時代。古いコネクションでは仕事もチャンスも巡ってきません。自分のバリューを指針にして行動することが重要なのだと岡崎さんは言います。新規事業開発も、人生も、ひたすら行動する人が一歩先に進むことができ、答えが見つかっていく。
「失敗しても、折れても、情熱を失わないことが本当の才能だ」。これが数多くの新規事業開発の経験から導いた岡崎さんのひとつの答えです。
岡崎 史
株式会社エナジャイズ 代表取締役。大学卒業後、大手飲料メーカーグループを経てインターネット関連企業を中心に多数の新規事業開発に携わる。その後、IT企業取締役就任。2009年株式会社エナジャイズを創業。数多くの新規事業立ち上げを行ってきた経験とノウハウを活かし、エナジャイズのビジョンである「一つでも多くの新規事業創出のために」、BtoBの新規事業に特化したスタートアップスタジオ型の事業開発支援を行っている。
本レポートは、自律的キャリア教育として、社会で活躍する女性にご講演いただき、学生が聴講、インタビューしてレポートを作成しています。
指導教員:石橋勝利 株式会社アクシス デザインデベロップメント ディレクター